チンパンジーの行動学~動物園から野生へ

2011年1月、野毛山動物園で開催された、
開園60周年プレ企画「Zoo to Wildセミナー ~動物園から野生を感じよう!~」の
第1回『チンパンジーの行動学 ~動物園から野生へ』に参加しました。

講師は京都大学野生動物研究センターの森村成樹さん、チンパンジー・サンクチュアリ・宇土でエンリッチメントの研究をされている方です。

講義が始まるまで少し時間があったので、その間、森村さんが、ギニアのボッソウ、ニンバのチンパンジーのスライドを見せてくださり、解説してくださいました。日本の研究者の方々がここで野生のチンパンジーの研究をすると同時に、破壊が進む森で絶滅の危機に瀕しているチンパンジーの群れの保護に取り組んでいます。その保全活動の一つが「緑の回廊プロジェクト」で、現在たった1群12人しか残っていないボッソウの森と、4~5群のチンパンジーの生息が確認されているニンバ山の間で、分断されてしまっている土地に植林をして、チンパンジーの往来を可能にし、絶滅を防ごうという取組だそうです。

このような有意義なお話の後、今回のセミナーの始まりです。
メインのテーマはチンパンジーのコミュニケーションについて。
チンパンジー・サンクチュアリ・宇土で暮らすチンパンジーの群れでのコミュニケーションをビデオで見て、解説していただきました。
興味深いのが、チンパンジーの「泣く」という行動です。
何か恐かったり思い通りにいかなかったりすると、泣きます。人間の「泣く」とイコールではないけれど、近い感情表現のようです。人間と違うところは、チンパンジーは、攻撃交渉などがあった後、一人で泣いて、納得して、親和的行動に移るところです。泣くことは、対他個体ではなく、自分の中にある感情だそうです。攻撃されたときや恐かったときに、一人で壁に向かって泣いて、泣いた後はさっきまで喧嘩していた相手のところに行って遊んだりします。「泣く」ことによって、自分の中で問題を解決しているような感じです。仲間と平和的関係を保つための一つの手段のようでもあります。
森村さんは、「動物園で、チンパンジーのこのような平和的なコミュニケーションの形を見て、また他の動物のコミュニケーションを見て、我々人間にもできるかなと考えてみてほしい」というようなことをおっしゃっていました。
今まで私の中になかった視点だったので、とても勉強になりました。地球上には人間以外のさまざまな生物がいて、多くの生物が仲間とコミュニケーションを取りながら生きています。仲間と平和を保つためのコミュニケーション、これは生物によってさまざまです。動物園で見られる生物はほんのわずかだけど、私たち人間が他の生物から学ばせてもらう貴重なチャンスがそこにはあるのだなぁと思いました。

さて、森村さんの講演が終わり、次は、飼育員さんによる野毛山のチンパンジーの紹介です。
野毛山のチンパンジーは3人。
ピーコ(メス・45歳)
コブヘイ(オス・14歳)
ミラクル(メス・9歳)
です。
ピーコは年齢からもわかるように、40年以上前から野毛山にいるチンパンジーです。ピーコの若い頃の白黒写真では、スカートを履いていて、とっても可愛らしかったです。
コブヘイは、飼育員さんと遊ぶのが大好きだそうで、セミナーが始まる前にも飼育員さんが遊んであげているのが見えました。
そして、ミラクル。なんと、ミラクルはこのとき、妊娠中で臨月でした。だんなさんはコブヘイです。ミラクルの出産に備え、暖房設備も増設したとおっしゃっていました。
ミラクルが無事赤ちゃんを産んでくれたら、野毛山のチンパンジーは4人になる、ピーコにとって4人での暮らしは初めてなのでそれも楽しみと、飼育員さんはとても優しい表情でおっしゃっていて、私も嬉しくなりました。

そして次は、チンパンジーの「行動観察」。
研究者の方々が実際に行っている行動観察を簡素化したような形で、森村さんの指導の下行われました。
参加者全員に「行動観察シート」が配られ、3人のチンパンジーの中から自分が観察するチンパンジーを決めます。
シートには、行動の種類=「休む」「食べる」「移動する」「仲間とつきあう」「行動1~5」「その他」の記載があり、1分毎に対象チンパンジーがこの内のどの行動をしたかを記録していきます。
全員でチンパンジー舎の前に行って、チンパンジーの行動を見つめます。飼育員さんが1分毎に「1分経ちました~」と声をかけてくださり、そのたびに、その時にとっている行動に○をつけます。
一度に多くの人が見に来たので、コブヘイが怯えて興奮して壁を叩きながら走ったり、グリメイス(口角が下がって上下の歯が見える表情、恐れを表す表情)になっていました。コブヘイをなだめるために、森村さんがパンティング(弱い調子で声を出して相手の緊張を和らげる)をしていたのが印象的でした。
ピーコとミラクルは特に気にしていないようでした。
私はピーコを観察対象にしていたのですが、15分間の内、3分が「休む」、1分が「食べる」、7分が「移動する」、2分が「行動1=いない(部屋に引っ込んでいる)」でした。おわかりの通り、全部で15のはずが、13しかありません。。。。単純なようで意外と難しい行動観察でした。これを、参加者全員で集計することで、より客観的に、それぞれのチンパンジーの行動を分析します。1人でやっていると、主観が入ったり、私みたいに間違ったりしますからね。。この観察を何日も行って、行動を研究していくのだそうです。
初めての経験でとても面白かったです。

そして、まとめです。
最後にまた、チンパンジー・サンクチュアリ・宇土のチンパンジーたちの行動をビデオで見て、森村さんがいろいろお話してくださいました。
印象に残ったのは、チンパンジーの社会にはコミュニケーションのルールがあるけれど、たとえば群れでの暮らしに慣れていなくて、あるコミュニケーションができない個体や、怪我をしていて動きが仲間と違う個体がいたとしても、仲間はその個体をそういうものだと認め、全体で新たなコミュニケーションのルールを築き、暮らしていく、自分たちでルールを作り変えていくことができる動物だとおっしゃっていたことです。ここから私たち人間も学んでいくことができるのではないかということです。

今回このセミナーに参加して、動物園の動物を見るときの新しい見方を教えていただくことができて、本当に有意義でした。また是非このようなセミナーに参加できればと思います。

そしてなんと!!このセミナーから5日後の1月20日に、ミラクルが無事メスの赤ちゃんを産んだそうです!!!おめでとう、ミラクル!そしてコブヘイも!
赤ちゃん、元気に育ってね!
こちら、出産5日前のミラクル↓ 下の写真をよく見るとお腹がとても大きいのがわかります。
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こちらはピーコさん↓ 初めての4人暮らしを楽しんでね♪
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コブヘイの写真がなくてゴメンナサイ~
今度、家族4人の写真を撮らせてもらうのを楽しみにしてます☆

皆さんも是非、野毛山動物園のチンパンジーに会いに行って、赤ちゃんはもちろん、チンパンジーたちの行動を観察してみてください。きっと楽しい発見があると思いますよ♪
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by chappo10 | 2011-02-13 23:04 | 野毛山動物園